「トイレに行くだけで泣かれる。この後追い、いつまで続くの?」
ピークの時期と、消耗しないための乗り切り方を研究からまとめました。
後追いはいつから始まって、いつまで続く?
後追いは、養育者が視界から消えると泣いたり追いかけたりする「分離不安(separation distress)」の行動です。困った癖ではなく、特定の人との愛着が育った証拠として発達心理学では扱われてきました。
研究で分かっていること
- 始まりは生後6〜8か月ごろ:グラスゲーの乳児60名を1年以上追跡した調査で、特定の人に対する分離時の抗議(separation protest)が生後6〜8か月ごろに現れ、その後まもなく人見知りが続くパターンが報告されています(Schaffer & Emerson, 1964)
- ピークは1歳前後〜1歳3か月ごろ:分離時の泣きは生後8〜9か月ごろから増え、おおむね13〜15か月で最も強くなり、その後2歳に向けて下がっていくという曲線が、文化や育児環境の異なる複数の集団で共通して観察されています(Kagan, Kearsley & Zelazo, 1978)
- 「泣けば泣くほど甘え癖がつく」とは限らない:生後まもない時期に泣きへ素早く応じた母親の乳児は、1歳時点でむしろ泣く時間が短く、他の伝え方が育っていたと報告されています(Bell & Ainsworth, 1972)
- 安心の基地があるほど離れられる:養育者が近くにいると乳児の探索行動が増える「安全基地(secure base)」の働きが繰り返し確認されています(Ainsworth et al., 1978)
月齢別の目安と、親が感じる大変さ
個人差はとても大きく、ほとんど後追いをしない子も、2歳を過ぎても離れがたい子もいます。下の表は「そういう時期に入ったんだ」と見当をつけるための、あくまで大まかな目安です。
| 月齢 | よくある様子 | 関わり方の軸 |
|---|---|---|
| 0〜5か月 | 後追いはまだ目立たない。声や抱っこで落ち着く | 泣きに応じて安心を積む |
| 6〜9か月 | 姿が消えると泣く。ハイハイで追い始める | 見えなくても声を届ける |
| 10〜18か月 | ピーク期。トイレ・キッチンにもついてくる | 短い分離を繰り返して慣らす |
| 18か月〜2歳 | 言葉と見通しが育ち、少しずつ待てるようになる | 「いつ戻るか」を言葉で伝える |
| 2〜3歳 | 場面限定(登園時など)に狭まっていくことが多い | 別れの儀式を短く固定する |
後追いが激しい時期は、人見知りが強く出る時期とも重なりやすい段階です。人見知りの有無と愛着の関係については、こちらで詳しく整理しています。
なぜ後追いするの? 3つの発達がそろうから
1. 特定の人が「特別」になる
生後半年を過ぎると、赤ちゃんは「誰でもいい」から「この人がいい」へ移行します。ボウルビィはこの段階を明確な愛着の段階と呼び、およそ6か月から2〜3歳まで続くとしました(Bowlby, 1969/1982)。後追いは、その移行が起きたサインです。
2. 「見えない=いなくなった」ではなくなる途中
物や人が視界から消えても存在し続けると理解する力(対象の永続性)は、この時期にちょうど育っている最中です。「まだいるはずなのに見えない」という状態は、赤ちゃんにとって最も不安が高まる状況になります。
3. 移動できるようになる
ハイハイやつかまり立ちで自分から離れられるようになるほど、離れたときの不安も強くなります。後追いが激しい時期は、運動発達が伸びている時期でもあります。
後追いを乗り切る4つのコツ
姿が消えても「声」を切らさない
トイレやキッチンから「ママここにいるよ」「もうすぐ戻るね」と声を出し続けます。見えなくても声で存在が確認できると、消えたのではないと学習しやすくなります。無言で消えるのが、いちばん不安を大きくします。
10秒の分離を、1日に何度も
いきなり長時間離れるより、「離れる→すぐ戻る」の短い成功体験を数多く積むほうが負担が軽くなります。10秒で戻る、次は30秒、というように少しずつ伸ばします。うまくいかない日は前の長さに戻して構いません。
別れの合図を毎回同じにする
「ハイタッチ→バイバイ→行ってきます」のように、短く固定した手順を毎回同じ順で行います。次に何が起きるかの見通しが立つと、切り替えが早くなります。長引かせず、決めた手順で切り上げるのがポイントです。
戻ってきたときを、いちばん丁寧に
安全基地としての働きが強まるのは、離れる場面より再会の場面です。戻ったら数分は抱っこや遊びに集中し、「戻ってくると必ずいいことがある」という経験にします。ここが満たされると、次の分離が楽になります。
やりがちなNGと、おすすめの対応
✕ やりがち
泣かせないように、そっと黙って部屋を出る。
◯ おすすめ
泣いても必ず「行ってくるね」と伝えてから出る。予告があるほうが、次第に不安は小さくなります。
✕ やりがち
「泣かないの」「もう赤ちゃんじゃないでしょ」と気持ちを打ち消す。
◯ おすすめ
「離れるのがさみしいんだね」と言葉にしてから、次の行動へ促します。感情に名前をつける関わりは、癇癪の場面でも役立ちます。
✕ やりがち
甘えさせすぎたせいだと自分を責め、抱っこを我慢する。
◯ おすすめ
応じることが依存を強めるとは限りません(Bell & Ainsworth, 1972)。応じられる範囲で応じ、無理な日は安全を確保して距離を取ります。
気持ちを言葉にする関わり方は、この先のイヤイヤ期でもそのまま使えます。
保育園の預け始めがつらいとき
預け始めの時期に、乳児のコルチゾール(ストレス関連ホルモン)が家庭にいる日より上がることが報告されています。慣らし保育の期間に養育者が付き添えた子のほうが負担が小さかったこと、また上昇はしばらく続きうることも示されています(Ahnert, Gunnar, Lamb & Barthel, 2004)。
つまり、預け始めに泣くのは順応の途中で自然に起きることであり、慣らし期間を十分に取ることには意味があります。日中の様子を保育者に確認し、家庭では再会の時間を厚くする——この2つで十分に支えられます。
こんなときは相談を
後追いのほとんどは発達の途中経過ですが、次のような場合は一度専門家に様子を伝えてみてください。判断材料が増えるだけでも、親の負担は軽くなります。
- 不安が強すぎて食事・睡眠・遊びが続けられない状態が、4週間以上続いている
- 年齢が上がってもまったく和らがず、就園・就学の生活に支障が出ている
- 名前を呼んでも反応が乏しい、目が合いにくいなど、後追い以外の気がかりが重なる
- 親自身が眠れない・気持ちが落ち込むなど、消耗が続いている
相談先は、かかりつけの小児科、自治体の保健センター(乳幼児健診の担当窓口)、子育て世代包括支援センターなどです。発達面の気がかりが重なる場合は、こちらも参考にしてください。
今日からできること
後追いは生後6〜8か月ごろに始まり、13〜15か月あたりを山として、2歳に向けて落ち着いていくのが典型的な流れです。終わりの見えないトンネルではありません。
やることは、姿が見えなくても声を届けることと、戻ってきたときを丁寧にすることの2つだけ。完璧に応じられない日があっても、積み重ねは失われません。
よくある質問
後追いは何歳ごろに終わりますか?
1歳3か月前後をピークに、2歳に向けて弱まっていくのが典型的な経過です(Kagan et al., 1978)。ただし個人差が大きく、2〜3歳で登園時など特定の場面だけに残ることもよくあります。
後追いが全然ないのですが、愛着に問題があるのでしょうか?
後追いの強さには生まれつきの気質差が大きく関わり、弱いこと自体が愛着の問題を意味するわけではありません。名前への反応や目線の共有など、他のやりとりが育っていれば過度に心配しなくて大丈夫です。
泣いたらすぐ抱っこすると、癖になりませんか?
生後まもない時期に泣きへ素早く応じた乳児のほうが、1歳時点で泣く時間が短かったと報告されています(Bell & Ainsworth, 1972)。応じることが依存を強めるという単純な関係ではないと考えられています。
下の子が生まれてから後追いが復活しました。
きょうだいの誕生、引っ越し、入園などの環境変化のあとに一時的に強まるのはよくあることです。多くは数週間から数か月で落ち着きます。1対1の短い時間を毎日決めて確保すると和らぎやすくなります。
家事がまったく進みません。どうすればいいですか?
抱っこひもで一緒に動く、安全な範囲で「見える場所」に居場所を作る、家事の時間そのものを減らす、のいずれかが現実的です。ピーク期は数か月間の一時的な状態と割り切り、手を抜ける家事から抜いてください。
参考文献
- Schaffer, H. R., & Emerson, P. E. (1964). The development of social attachments in infancy. Monographs of the Society for Research in Child Development, 29(3), 1–77.
- Kagan, J., Kearsley, R. B., & Zelazo, P. R. (1978). Infancy: Its Place in Human Development. Harvard University Press.
- Bell, S. M., & Ainsworth, M. D. S. (1972). Infant crying and maternal responsiveness. Child Development, 43(4), 1171–1190.
- Ainsworth, M. D. S., Blehar, M. C., Waters, E., & Wall, S. (1978). Patterns of Attachment: A Psychological Study of the Strange Situation. Erlbaum.
- Bowlby, J. (1969/1982). Attachment and Loss, Vol. 1: Attachment (2nd ed.). Basic Books.
- Ahnert, L., Gunnar, M. R., Lamb, M. E., & Barthel, M. (2004). Transition to child care: Associations with infant–mother attachment, infant negative emotion, and cortisol elevations. Child Development, 75(3), 639–650.


