心と社会性

上の子の赤ちゃん返り対応〜愛着研究で読み解く”わざと困らせる”行動と効果的な3つの声かけ

PR 本記事には商品・サービスのアフィリエイトリンクが含まれます。詳細は プライバシーポリシー をご確認ください。
SIBLING PSYCHOLOGY
「赤ちゃん言葉に戻った…」「わざと困らせてくる…」
下の子が生まれた前後、上の子の様子が一変して戸惑う親はとても多いものです。
でもこの “赤ちゃん返り” は、心理学では 問題行動ではなく “愛着の確認” 行動 として説明されます。
ミシガン大学の Volling 教授らがレビューした研究では、上の子のおよそ 90% 以上が何らかの行動変化 を示し、その多くが 6か月以内に自然に落ち着く ことが示されています。
この記事でわかること
  • 赤ちゃん返りはなぜ “愛着の確認” 行動なのか
  • 研究で分かった発生率と落ち着く時期の目安
  • 退行行動の3パターンと、見分けるサイン
  • “わざと困らせる” 行動の正体は注意要求
  • 研究が示す「上の子最優先」の3つの声かけ

赤ちゃん返りは “わがまま” ではなく “愛着の確認” 行動

結論からお伝えすると、上の子の赤ちゃん返り(regression)は「お母さんは私のお母さんでもあるよね?」を自分もある愛着行動の一種として理解されます。心理学者ボウルビィの愛着理論(Attachment Theory)では、子どもは強いストレスを感じたとき、安全基地である養育者にしがみつく行動を取るとされます。

下の子の誕生は、上の子にとって人生最大級のストレスイベント。それまで100%自分に向いていた親の関心が、目の前で別の存在に注がれる体験は、想像以上に大きな揼さぶりです。だから「赤ちゃんに戻れば、また私を見てくれる」という戦略を、無意識のうちに取り始めるのです。

📖 愛着行動とは
ストレス時に養育者に近づき、身体的・情緒的接触を求める行動。乳幼児期は泣く・しがみつく・後追いとして表れ、幼児期以降は退行・甘え・攻撃など多様な形を取る。愛されているか確認するためのサインであり、無視されない経験を重ねるほど安定する。

研究で分かった発生率と “落ち着く時期”

ミシガン大学の Volling(2012)が複数の縦断研究を統合したレビューによると、上の子の赤ちゃん返りには�)�くほど明確なカーブがあります。Stewart ら(1987)の縦断研究では、92%の上の子が下の子誕生後に何らかの「行動の難しさ」を示しましたが、その多くが半年〜1年で落ち着いていきました。

時期 よくある状態 親の心構え
妊娠後期〜出産直後 不安・甘えの増加。夜泣き再発 “これから大事件が起きる” を察知している
出産〜2か月 退行のピーク。癇癪・赤ちゃん言葉・抱っこ要求 最もしんどい時期。受け止めきる
3〜6か月 徐々に落ち着く。下の子への愛着も芽生える “お兄ちゃん/お姉ちゃん” の自覚が出始める
6〜12か月 大半は新しい安定状態 兄弟関係の質はこの時期の対応で決まる

※ Volling (2012, 2017), Stewart et al. (1987), Dunn & Kendrick (1982) のデータをもとに作成

「いつ終わるか分からない」と思うと辛いものですが、出産直後がピーク、半年で多くは落ち着くという見通しを持つだけで、親の心の余裕は大きく変わります。

退行行動の “3つのパターン”

赤ちゃん返りは大きく次の3タイプに分類できます。どのタイプも “愛されている確認” が根っこにあるという点では同じです。

1
言語の退行 — 急に赤ちゃん言葉に戻る
「ぶーぶー」「まんま」など、卒業したはずの幼児語が再登場。「赤ちゃんになれば、お母さんがまた自分を見てくれる」という、もっともシンプルな仮説を試している段階。叱らず受け止めるのが鉄則です。
2
身体の退行 — おむつ・授乳・抱っこ要求
トイレが完璧だった子のおもらし再発、おっぱいを欲しがる、ずっと抱っこを求める。下の子と “同じ扱い” を求める身体メッセージで、これも一時的なら問題なし。要求にできる範囲で応えることが、結果的に最短ルートになります。
3
情緒の退行 — 癇癪・甘え・”わざと困らせる”
大泣き、急な怒り、わざとモノを壊す、下の子をつねる── 親をいちばん消耗させるタイプ。怒られてでも親の関心を取り戻したいという強い感情が背景にあり、Volling らも「強い注意要求行動」と分類しています。

「わざと困らせる」行動の正体は “注意要求”

多くの親がいちばん戸惑うのが、タイプ3の中でも特に “わざと困ることをする” 行動です。「下の子のミルクをこぼす」「親が見ているところで悪さをする」「優しく接していたのに突然つねる」── これらには共通の構造があります。

Volling(2012)は、上の子の問題行動の多くは “親が下の子に向ける関心を、自分に振り戻すための戦略” だと指摘しています。叱られることであっても、無視されるよりはるかにマシ── 子どもの脳はそう判断するのです。

つまり、わざと困らせる行動が増えたら、それは「もっと見て」のサイン。叱る回数を増やしても、注意要求の戦略としては成功しているので、むしろ強化されるという皮肉な構造に陥ります。

親がやりがちなNG対応

  • 「お兄ちゃん/お姉ちゃんなんだから」 — 役割を押し付ける言葉は、上の子に「自分はもう赤ちゃんじゃないから愛されない」と感じさせてしまいます。
  • 下の子と比較する — 「赤ちゃんはまだ小さいんだから優しくして」は、上の子から見ると“下の子優先” の宣告です。
  • 退行を叱って戻させようとする — 「赤ちゃん言葉やめなさい!」と矯正すると、注意要求が別の形(癇癪・破壊行動)に置き換わるだけ。
  • 気持ちを聞かずに正論を返す — 「ママだって疲れてるの」「我慢して」より先に、まず子どもの気持ちを言葉にする必要があります。

研究が示す “上の子最優先” の3つの声かけ

Dunn & Kendrick(1982)の古典的研究以降、繰り返し確認されているのは、“上の子に意識的に向ける親の関心の量” が、退行の長さと兄弟関係の質を決めるという事実です。具体的には、次の3つで十分です。

1
1日10分の “上の子だけ” タイム
下の子が寝た瞬間や、もう一方の親が見ているとき、「今はあなただけの時間」と意図的に伝える。長さより“独占感” のある時間であることが重要です。
2
「待ってくれてありがとう」を繰り返す
下の子の世話で順番が回ってきたとき、まず「待っててくれてありがとう。助かったよ」。我慢していたことを言葉で承認すると、上の子は“我慢が報われる” 経験を蓄積していきます。
3
退行を “受け入れて” 時間で戻す
赤ちゃん言葉も、抱っこ要求も、「いいよ、おいで」と受け入れる。Volling(2017)は、退行を一時的に受容した家庭ほど早く落ち着き、長期的な兄弟関係の質も良好だったと報告しています。

上の子が読んで安心できる絵本3冊

言葉でうまく言えない上の子の気持ちを、代わりに整理してくれるのが絵本の力です。研究で示された「気持ちを言葉化する効果」も活かしつつ、2〜6歳の上の子に特に響く定番3冊を厳選しました。

📚 ① 『ちょっとだけ』瀧村有子/鈴木永子(福音館書店)
ちょっとだけ 瀧村有子

「なっちゃんはおねえちゃんになりました…」── 妹が生まれて少しさびしい上の子の気持ちを、淡々と、でも限りなく優しく描いた名作。“我慢している自分を分かってもらえそ” 感覚を、絵本越しに体験できる。多くの保育士が真っ先に薦める1冊です。対象 3歳〜6歳

こんな時に:下の子が生まれた直後〜半年。寝る前に上の子の隣でゆっくり読み聞かせるのが効果的。読み終わったら “○○ちゃんもがんばってるね” の一言を。
📚 ② 『ねえだっこして』竹下文子/田中清代(金の星社)
ねえ だっこして 竹下文子 田中清代

猫の視点で「ねえ、だっこして」と訴える設定が、まさに上の子の “言葉にできない気持ち” の代弁になる絵本。“赤ちゃんに取られた感” を子どもが客観視できる珍しい構成で、読み終えたあと自然と上の子を抱きしめたくなります。対象 2歳〜5歳

こんな時に:「抱っこ抱っこ」が止まらないとき。読み聞かせのあとは絵本越しに気持ちを話せるようになり、しがみつきが収まる子も。
📚 ③ 『あさえとちいさいいもうと』筒井頼子/林明子(福音館書店)
あさえとちいさいいもうと 筒井頼子 林明子

林明子さんの絵本は数あれど、上の子の “妹を心配する自分” の気持ちを発見するストーリーとして、これに勝るものはありません。妹がいなくなったあさえが必死に探す姿に、上の子は“妹のことを大事に思っている自分” を肯定的に発見します。対象 3歳〜小学校低学年

こんな時に:下の子が生まれて3〜6か月、上の子が少し落ち着いてきた頃。”お兄ちゃん/お姉ちゃんになる” 自我が芽生えるきっかけにぴったり。
💡 関連記事:自己肯定感を育てる声かけは 「自己肯定感を育てる声かけ完全ガイド」、イヤイヤ期との重なりが気になる方は 「イヤイヤ期への対応」 もあわせてどうぞ。
CONCLUSION

まとめ ― 退行は “終わる” 行動です

赤ちゃん返りは、上の子が「私もまだ愛されているか」を確かめている 愛着行動です。研究上は9割以上の上の子に表れ、半年で多くは落ち着くもの。叱って戻そうとするほど別の形で長引き、受け入れて寄り添うほど早く収まる ── これが繰り返し確認されている結論です。

親として最も効くのは、1日10分の “上の子だけ” の時間 と、「待ってくれてありがとう」 の積み重ね。完璧な対応よりも、続ける姿勢の方がずっと効きます。

退行は “問題” ではなく “通過点”。あなたが疲れすぎないことが、結果として上の子を救います。
📚 参考文献(タップで開く)
  • Volling, B. L. (2012). Family transitions following the birth of a sibling: An empirical review of changes in the firstborn’s adjustment. Psychological Bulletin, 138(3), 497–528.
  • Volling, B. L., Yu, T., Gonzalez, R., Tengelitsch, E., & Stevenson, M. M. (2017). Maternal and paternal trajectories of depressive symptoms predict family risk and children’s emotional and behavioral problems after the birth of a sibling. Development and Psychopathology, 29(4), 1307–1324.
  • Stewart, R. B., Mobley, L. A., Van Tuyl, S. S., & Salvador, M. A. (1987). The firstborn’s adjustment to the birth of a sibling: A longitudinal assessment. Child Development, 58(2), 341–355.
  • Dunn, J., & Kendrick, C. (1982). Siblings: Love, Envy and Understanding. Cambridge, MA: Harvard University Press.
  • Bowlby, J. (1969). Attachment and Loss, Vol.1: Attachment. New York: Basic Books.
  • Howe, N., Aquan-Assee, J., Bukowski, W. M., Lehoux, P. M., & Rinaldi, C. M. (2001). Siblings as confidants: Emotional understanding, relationship warmth, and sibling self-disclosure. Social Development, 10(4), 439–454.
RESEARCH HUB · 心と社会性
📗 愛着理論ガイド|Bowlby・Ainsworth・4スタイル

分離不安・登園しぶり・対人関係の悩みを根本から理解する、論文ベースの愛着理論ガイド。Sroufe縦断研究、日本の文化的特徴まで網羅。

研究ハブ記事を読む →

関連記事

ラボパパの似顔絵アイコン
この記事を書いた人ラボパパ
理系出身のエンジニア/5歳・4歳の二児の父

「なんとなく良さそう」ではなく「研究で分かっていること」をベースに育児をしたい一人の親です。論文や公的ガイドラインの原典に当たり、分かったこと・分からないことを正直に整理しています。

※ 本記事は研究の紹介・解説であり、医療・発達の診断や個別の助言ではありません。お子さんの発達・心身にご不安がある場合は、小児科・自治体の発達相談窓口など専門機関にご相談ください。

📚 NEXT READS ― 目的で選ぶ比較ガイド

「何を買うか」で迷ったら、まずここから

01

通信教育3社を研究視点で比較

こどもちゃれんじ・Z会・スマイルゼミを3つの科学的基準で比較

02

年齢別の知育玩具おすすめ10選

0〜6歳、発達心理学の視点で厳選。オープンエンド型重視

03

幼児英語教材5選を徹底比較

DWE・ちゃれんじEng・楽天ABC等を研究ベースで比較

この記事が役に立ったらシェア
タイトルとURLをコピーしました