英国の Cox らが開発したEPDS(エジンバラ産後うつ病質問票)と、O’Hara のレビュー研究を統合し、“今すぐ自分でできる” セルフチェックと早期介入のステップを整理しました。
本記事は産後のこころの変化に関する情報提供で、診断や治療を行うものではありません。つらさを感じている時は、がんばって乗り切ろうとせず、早めに次へご相談ください。
- かかりつけの産婦人科・小児科
- お住まいの市区町村の保健センター・母子保健の担当、産後ケア事業
- 気持ちの落ち込みや不眠が続く時は、心療内科・精神科も選択肢です
眠れない・食べられない・赤ちゃんや自分を傷つけたい気持ちがあるなど、つらさが強い時は、ためらわずに医療機関や地域の相談窓口に連絡してください。あなたが助けを求めることは、赤ちゃんにとっても大切なことです。
3つの状態を区別する
| 状態 | 時期 | 頻度 | 受診 |
|---|---|---|---|
| マタニティブルー | 産後数日〜2週間 | 約 50〜70% | 通常不要(自然軽快) |
| 産後うつ | 産後2週間〜1年 | 約 10〜15% | 必要 |
| 産後精神病 | 産後1〜4週 | 約 0.1% | 緊急受診 |
EPDS ── 家庭で出来るセルフスクリーニング
英国の John Cox らが1987年に開発した エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)は、世界中で最も使われているスクリーニング法(British Journal of Psychiatry)。10問の自己記入式で5分以内に終わります。日本でも母子保健で標準化されています。
EPDS の日本語版は無料でオンライン公開されており、自治体の母子保健センターや産婦人科でも実施可能です。
放置すると子どもの発達にも影響
O’Hara & McCabe(2013)の総説や Murray らの長期追跡研究によれば、産後うつは母親の苦痛だけでなく、子の認知・情緒・行動発達に長期的な影響を及ぼすことが示されています。
“今すぐ受診” すべきライン
家庭で出来る5つのセルフケア
パートナー・家族への注意
父親自身も10%が産後うつに罹患(Paternal Postnatal Depression, Paulson & Bazemore 2010)。”パパが頑張りすぎ” な家庭では父親も EPDS でセルフチェックを。
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まとめ ── “10人に1人” の病気だから、隠さない
産後うつは日本の母親の10〜15%が経験する、ホルモン・睡眠不足・社会的孤立による生物-心理-社会的問題。EPDS 9点以上で受診を、自傷念慮があれば即受診を。早期治療で母子双方の予後が劇的に改善します。
5つのセルフケア ── ① 睡眠を死守 ② 誰かに話す ③ 完璧主義を捨てる ④ 1日10分の自分時間 ⑤ 9点以上は受診。
“母親だから我慢” は子のためにもなりません。受診は弱さではなく、子と自分への投資。それが研究的に最も効く戦略です。
参考文献
・Cox, J. L., Holden, J. M., & Sagovsky, R. (1987). Detection of postnatal depression: Development of the 10-item Edinburgh Postnatal Depression Scale. British Journal of Psychiatry, 150(6), 782-786.
・O’Hara, M. W., & McCabe, J. E. (2013). Postpartum depression: Current status and future directions. Annual Review of Clinical Psychology, 9, 379-407.
・Murray, L., et al. (2011). Maternal postnatal depression and the development of depression in offspring up to 16 years of age. Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry, 50(5), 460-470.
・岡野禎治, 村田真理子, 増地聡子 ほか (1996). 日本版エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)の信頼性と妥当性. 精神科診断学, 7, 525-533.
・Paulson, J. F., & Bazemore, S. D. (2010). Prenatal and postpartum depression in fathers and its association with maternal depression. JAMA, 303(19), 1961-1969.
・Beck, C. T. (1996). A meta-analysis of the relationship between postpartum depression and infant temperament. Nursing Research, 45(4), 225-230.


